8年越しの哀歌
昨年末、ネットニュースで、八代亜紀さんが亡くなったことを知った。
病気で療養していることは知っていたけど、そこまで深刻なことになっている
とは想像もしなかった。うまく言葉にできないけど、とにかく驚いてしまった。
8年前、僕らは八代亜紀さんのツアーを密着取材させてもらっていた。
カメラの前で八代さんは
「ドン底の悲しみに向き合いたい」
「いまの私だからこそ届けられる響きがある。」
と繰り返し語っていた。
歌手デビュー45周年。
65歳になった彼女が向き合おうとしていたのはBluesだった。
B.B.king、Robert Johnson、Oscar Benton本格的なBluesから
淡谷のり子、藤圭子、二葉あき子などの歌謡ブルースをカバー。
中村中やクレージーケンバンドの横山剣が新作を書き下ろした。
ツアーバンドには、伊東ミキオ、梅津和時、藤井一彦、中條卓、サンコンJr.
名うてのロックミュージシャンが参加。今まで、みたことのない八代亜紀の歌を
とらえることができるんじゃないか? 僕らは期待して、哀歌と銘打ったライブ
ツアーの東京公演を8カメ出して、収録した。
でも、番組にはならなかった。
あのパフォーマンスを丸ごと伝えることは、残念ながら出来なかった。
熊本地震が起きたからだった。
ツアーの初日を飾る予定だった熊本公演は中止。番組も、単身熊本に乗り込んだ
八代さんの復興支援公演を中心にドキュメントすることになった。
その後、この素材を使った企画を各局に持っていくものの、どこの放送局も
門前払い、採択はされなかった。
あれから8年。
権利許諾をとるのは大変だろうし、さすがに世に出る事はないだろうとLacieの
古いハードディスクも廃棄する予定だった。ところが、すんでのところで一本の
電話がかかってきた。「素材があれば、動かしませんか?八代さんのためにも」
レーベルの担当者からだった。
何をやってもうまくいかない時、きっとそこには問題があるかもしれない。
リセットして次にいかないと精神的にもやってられない。
でも、企画もそうだけど、諦めたら何も始まらない。
クリエイターって?そうですよね?八代さん?
BS朝日プレミアムステージ
八代亜紀一周忌特別番組
哀歌 AIUTA
〜幻のステージを今〜
12月29日(日)21:00-22:54に放送となります。
プロデューサー 平野嘉弘